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公正証書遺言の作成と費用:スムーズな相続のために

カテゴリー: その他 遺言

更新日:2025.04.12

「公正証書遺言」の作成と費用について

皆様、こんにちは。司法書士の時任です。今回は、遺産相続において重要な役割を果たす「公正証書遺言」の作成と費用について詳しく解説します。

公正証書遺言とは?

公正証書遺言とは、公証役場の公証人が関与して作成する遺言書です。「公証人」とは、法律の専門家であり、遺言の内容が法律の形式に則っているかを確認し、その内容を公文書として記録する役割を担います。

ご自身で作成する自筆証書遺言と比較して、公正証書遺言は以下の点で強く推奨されます。

  • 無効になりにくい: 公証人が法律の知識に基づいて作成するため、形式不備による無効のリスクが極めて低いと言えます。
  • 内容が明確になる: 公証人が遺言者の意思を丁寧に聞き取り、法的な観点から適切な表現で遺言書を作成するため、解釈の余地が少なく、相続手続きがスムーズに進みやすくなります。
  • 紛失・改ざんの心配がない: 遺言書の原本は公証役場で厳重に保管されます。遺言者には、原本と同一の効力を持つ「正本」と、その写しである「謄本」が交付されます。万が一、正本や謄本を紛失した場合でも、公証役場に原本が保管されているため、再交付を請求することが可能です。
  • 検認が不要: 自筆証書遺言の場合、相続開始後に家庭裁判所での検認手続きが必要となりますが、公正証書遺言にはこの手続きが不要です。これにより、相続手続きを迅速に進めることができます。

公正証書遺言作成の流れ

公正証書遺言を作成する一般的な流れは以下の通りです。

  1. 公証役場または専門家への相談: まずは、公証役場に直接連絡するか、司法書士などの専門家に相談し、遺言の内容や必要な手続きについて相談します。
  2. 必要書類の準備: 遺言を作成するために必要な書類を収集します。主な書類は以下の通りです。
    • 遺言者の印鑑証明書(作成日より3ヶ月以内のもの)
    • 遺言者の戸籍謄本
    • 相続人となる方の戸籍謄本
    • 受遺者(相続人以外に財産を譲る方)の住民票
    • 不動産に関する書類(登記簿謄本または登記事項証明書、固定資産評価証明書など)
    • 預貯金に関する情報(金融機関名、支店名、口座種別、口座番号がわかるもの、残高がわかるもの)
    • その他財産に関する資料(株式、投資信託、保険など)
  3. 遺言内容の決定: 相続させる財産とその相手、遺言執行者の指定など、具体的な遺言の内容を決定します。
  4. 公証人との打ち合わせ: 準備した書類をもとに、公証人と遺言の内容について詳しく打ち合わせを行います。
  5. 証人2名の準備: 公正証書遺言の作成には、証人2名の立ち会いが必要です。証人には、未成年者、推定相続人およびその配偶者・直系血族、受遺者およびその配偶者・直系血族、公証人の関係者はなることができません。専門家に依頼した場合、証人を手配してもらえることもありますし、公証役場で紹介してもらえる場合もあります。
  6. 公証役場での作成当日: 予約した日時に、遺言者と証人2名が公証役場へ行きます。
    • 遺言者が公証人に対し、遺言の趣旨を口頭で伝えます。
    • 公証人がその内容を筆記し、遺言者と証人に読み聞かせ、または閲覧させます。
    • 遺言者と証人が、筆記された内容が正確であることを確認し、署名・押印(遺言者は原則として実印)を行います。
    • 公証人が、遺言書が上記の手続きに従って作成された旨を記載し、署名・押印します。
    • 遺言者は、公証人に手数料を支払い、公正証書遺言の正本と謄本を受け取ります。

遺言書の記載例

遺言書には、誰にどの財産を相続させるのかを明確に記載します。

  • 不動産の場合: 不動産の所在地、地番、家屋番号などを登記簿謄本に基づいて正確に記載します。
  • 預貯金の場合: 金融機関名、支店名、口座種別、口座番号を正確に記載します。
  • その他財産の場合: 財産の種類を特定できる情報を記載します。
  • 包括的な記載: 特定の財産以外の一切の財産を特定の相続人に相続させる旨を記載することも可能です。
  • 祭祀承継者の指定: 仏壇や墓地などの祭祀財産を引き継ぐ人を指定することもできます。
  • 遺言執行者の指定: 遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う遺言執行者を指定しておくと、相続手続きがスムーズに進みやすくなります。
  • 付言事項:付言事項とは、法的効力を持たない記載事項のことで、遺言書に絶対書かなければいけないものではありませんが、遺言者の気持ちや想いを残された相続人に伝える方法として役立ちます。例えば、家族へのメッセージ(「今までありがとう。」「仲良くね。」「ペットをお願いします。」)や葬儀やお墓の希望、自分がなぜ遺言を残すことにしたのか、等を付言事項に記すことができます。

公正証書遺言の費用(公証人手数料)

公正証書遺言の作成にかかる公証人手数料は、相続させる財産の価額と、財産を受け取る人の数によって変動します。

主な手数料の計算要素は以下の通りです。

  • 財産の価額に応じた手数料: 各受遺者が相続する財産の価額に応じて、段階的に手数料が定められています。
  • 遺言加算: 遺言全体の財産額が1億円以下の場合、一定額が加算されます。
  • 枚数加算: 遺言書の枚数が一定数を超えた場合、加算されることがあります。
  • 祭祀承継者指定加算: 遺言書で祭祀承継者を指定した場合、加算されることがあります。
  • 病床執務手数料: 遺言者が病気などで公証役場に出向けない場合に、公証人が自宅や病院などに出張して遺言書を作成する場合、通常の手数料の1.5倍に、さらに日当と交通費が加算されます。

具体的な手数料については、遺言の内容や財産の状況によって異なりますので、事前に公証役場または専門家に見積もりを依頼することをおすすめします

不動産をお持ちの方へ

遺産の中に不動産が含まれる場合、公正証書遺言を作成する際には、不動産の記載漏れがないように注意することが非常に重要です。登記簿謄本や固定資産評価証明書などを確認し、正確な情報を公証人に伝えるようにしましょう。

また、遺言書の記載方法によっては、相続後の登記手続きがスムーズに進まないケースもゼロではありません。不動産をお持ちの場合は、遺言書作成の段階から司法書士などの専門家に相談し、登記手続きを見据えた適切な遺言書の作成をサポートしてもらうことを強くおすすめします

まとめ

公正証書遺言は、遺言者の意思を確実に伝え、相続手続きを円滑に進めるための有効な手段です。費用はかかりますが、将来の相続におけるトラブルを未然に防ぐという観点からは、非常に意義のあるものと言えるでしょう。

ご自身の状況に合わせて、公正証書遺言の作成を検討してみてはいかがでしょうか。当事務所でも、遺言書作成に関するご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

【免責事項】

本ブログ記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言を提供するものではありません。具体的な相続手続きや遺言書作成については、必ず専門家にご相談ください。

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