Guardianship
任意後見
任意後見について教えてくださいWhat is voluntary guardianship
信頼できる人に
自分が将来判断能力が低下した時に備えて
財産管理や身上保護等を契約で任せる制度です。
判断能力がしっかりしている間に契約をしておいて、将来、判断能力が衰えた時に裁判所が選任する監督人のもとで任意後見人が当初の契約に基づいて業務を行っていきます。
※身上保護とは、福祉・介護・医療サービス等の利用について検討して契約することです。後見人が自ら食事や実際の介護をする訳ではありません。
任意後見とは「頭脳の保険」です。万が一の事故や病気に備えて体の保険に入るように、将来判断能力が低下してしまった時に備える保険が任意後見になります。任意後見契約をしないまま認知症になってしまうと裁判所が選んだ第三者が成年後見人になります。当然ながらお元気だったころのご本人の希望は全く分かりませんので、ご本人の希望が反映される可能性は低いと言わざるを得ません。
任意後見のメリットとデメリットPros & cons
メリット
- 自分が信頼できる人と予め具体的に契約をしておくことができる→希望した相手に契約に基づき確実に就任してもらうことができます。
- 契約内容を自由に決めることができる→参照「ライフプラン(指示書)とは何ですか?」
- 任意後見人は自由に選ぶことができます(司法書士・弁護士への依頼も可能)→家族内(子世代)が円満ではない場合や頼れる身内がいない場合にはお勧めです。
デメリット
- 任意後見監督人の選任が必要です。→外部の専門家への報酬支払(ランニングコスト)が必要です。月額おおよそ1万円から2万円程です。
- 判断能力低下後は、自由な財産処分はできません。本人のために必要な財産の管理や処分しかできません。相続税対策・争族対策を踏まえた積極的な資産運用をしたい場合は家族信託の方が適しています。
- 死後(葬儀や遺産の処理)の手続きは委任できません⇔死後事務委任契約が別途必要です。
ライフプラン(指示書)
とは何ですか?What is Living Will
任意後見契約書とは別にライフプラン(指示書)という文書を作ることもあります。これは、判断能力低下後にこんなことをしてもらいたいというご本人の意向をまとめた書類です。例えば次のような事柄があります。
- 施設に入るとすればどのようなところを希望するのか
- その際の自宅の処分方法
- 入院が必要な場合は、どこの病院に入りたくて希望する治療の方法は?
- 好きな食べ物や苦手な食べ物は
- 趣味
- 死亡時の連絡先
- 葬儀・納骨・墓地についての希望
このような事柄は、法的な意味合いが薄いものもありますが、ご本人という人格の根幹をなしていると考えます。
- 裁判所選任の成年後見人では、判断能力低下後の選任のためこのようなことはできません
一般社団法人つくば認知症・相続対策財産管理センター
任意後見でできること、できないことWhat can be done
出来ること
任意後見契約では、上記のとおり予め聞いておいた本人の要望を書面にすることで、医療関係者や介護関係者に伝えることができます。しかし、判断能力が低下してから選任される法定後見人では本人の要望は全く分からず、確認するすべもありません。これら看取りを含む医療同意、尊厳死等は高齢になった本人にとって自分の死に方を決める大きな問題です。備えておくことが重要だと考えます。
出来ないこと
- 医療同意医師が本人へ手術や輸血を行うためには、患者である本人の同意(医療同意)が必要になりますが、この医療同意は一身専属的(本人固有の)権利とされ委任や代理になじまないとされます。従いまして、手術や輸血という治療行為が必要になっても、その治療を受けるかどうかという医療同意は任意後見人にはできません。ただ、任意後見契約の公正証書の中で、任意後見人がどの程度、医療行為へ関わって欲しいのかを希望として記載しておくことはできます。それを元に医師へ本人の希望を伝えることはできます。
- 身元保証身元保証 司法書士等の専門家が身元保証人になることはできません。仮に身元保証人になった場合には、金銭を本人に代わって立て替える事態が想定され、その場合本人に対して請求することになり利益相反の関係になってしまうからです。
- 延命治療・尊厳死医療同意が認められていない以上、延命治療の実施や中止への同意も認められていません。ただその場合に備えて、任意後見契約の公正証書の中で、尊厳死を希望する旨を記載しておくことはできます。その書面を医師や看護師に見せて本人の意思を最大限尊重するように求めることになります。
- 看取り医療同意と同様に、任意後見人には何の権限もありません。ただし任意後見契約の中で予め伺っておいた本人の希望を医師へ伝えることはできます。
任意後見が向いている場合、不向きな場合Who is it suitable for?
- 子供がいない。いたとしても頼れない、頼りたくない事情がある
- 身寄りがない。親戚はいるが頼れない。
- 家族(子世代間)が一枚岩ではなく、将来的に後見人に誰がなるかもめる可能性がある。(ex. 長男が後見人になることに次男が反対する)
- 不動産の処分や資産を運用することは予想されない。
任意後見に向いている場合
- 任意後見に不向きな場合
- 不動産の処分が予想される場合には、任意後見だけでは不十分で合わせて家族信託の検討が必要です。例えば認知症発症後に自宅を処分して施設に入ることになった場合、法定後見の場合と異なり家庭裁判所の許可は不要です。しかし相応の合理的な理由が無い場合には、事後的に問題になる可能性があります。また賃貸物件を所有している場合には、所有者が認知症になると、賃貸物件が空いた際に新しい入居者と契約をすることもできません。また築年数が経過している場合には、大規模修繕工事や建て替えが必要になる可能性もあります。その場合、金融機関から融資を受ける可能性もあるかと思います。それらを全て正確に予想して任意後見契約に盛り込み、裁判所や後見監督人から指摘がされないように計画立てることは難しく、家族信託の方が適していると言えます。
見守り契約とは何ですか?monitoring medical changes
任意後見契約を締結した場合、その後のスタート時期は重要な問題です。この問題に対処する方法として、一般的には「見守り契約」というものが任意後見契約と一緒に結ばれます。見守り契約は、定期的に本人に電話をかけたり、訪問したりして、何か問題がないか、何か変わったことがないかを確認する業務の契約です。これにより、認知症の発症などによる任意後見契約の発効タイミングを常に確認できるため、安心感が得られます。電話や本人宅への訪問の際に、本人の判断能力の低下が見られる場合には、本人の同意を得た上で医師の診断書を取得し、任意後見監督人の選任申立てを行うことになります。特に任意後見人に親族ではなく専門家が就任する場合には、判断能力低下のタイミングを見極めるために見守り契約は必要だと考えています。誰もがいつ認知症になるか、ご自分ではなかなか分かりません。
定期的な電話や訪問をすることで、判断能力低下のタイミングを見極めます。
しっかりしている間の財産管理契約Financial Power of Attorney
判断能力がしっかりしている方が、上述の見守り契約や任意後見契約に加えて要望されることがあります。それは判断能力は問題ないけれど代わりに財産を管理して欲しいという要望です。
体調が悪く銀行に行くことがままならない
目が悪く通帳や数字の管理が難しい
夫が全てお金の管理をしており自分で通帳などの管理はしたことがなく、夫の死後に自分で財産の管理をすることが不安
このような場合には、財産管理契約があります。公正証書で作成することで本人の代理人として金融機関等で手続きが可能になります。ただ金融機関によっては理解が得られにくい場合もあり特に弁護士や司法書士の専門家以外の方が委任を受ける場合には注意が必要です。
成年後見制度(法定後見)との違いTwo types of adult guardianship
成年後見制度とは、知的障がいや認知症などによって判断能力が不十分な方が不利益を被らないよう代理人が契約手続きや財産管理を行う制度です。任意後見制度とは異なり、判断能力を喪失してしまった後の手続きです。認知症になってしまうと全資産が凍結されてしまいます。重要なのはその前に対策を取っておくことです。
成年後見制度のメリット
- 財産管理だけでなく身上保護も対象になります。身上保護とは、福祉・介護・医療サービス等の利用について検討して契約することです。後見人が自ら食事や実際の介護をする訳ではありません。
成年後見制度のデメリット
- 家族によるこれまでの財産管理が制限される ×子供への贈与 ×不動産の売却 △夫のお金を配偶者が生活費に使う
- 必ずしも家族が成年後見人になれるわけではありません
- 専門家(司法書士)が成年後見人になるとランニングコストがかかる(2万~6万/月)
- 親族が成年後見人になる場合、負担が大きい(途中でやめられない 定期報告が必要)
- 全資産が凍結されることを避けるために、認知症などで判断能力が失われる前に対策を取りましょう。